• 稽古に先立ち特に云いたい事は、小手先だけの剣 杖および体術の技にならないよう心掛ることである。
    それには、余り手を使わずいわゆる体捌きにより相手をくずし、巻き込む、倒す等の基本を練習すべきである。
  • 一般に伝わる如く合気道は 「徒手が主体である」と云うかわりに、ここでは 「体捌きが主体である」 と云い換えて話を進めることにする。
    徒手と云うことは何も持たないことの意味であって、剣杖を持ってもそれにとらわれず、吾身の一部分のとして扱い得た者がなし得る程の技であろう。
  • 合気道では、徒手であるかないかは、物を現実に持っているかいないかの相違だけである、技術的には剣の動き、杖の動き、体術の動きは三者一体になっていなければならない。
    自分が杖を持ち相手が剣で打ち込んできた場合、武道であるからにはそれを制しなければならない。 然し又、自分が剣を持ち相手が杖で突いてきた場合にもやはり制しなければならないのである。
    自分が素手であっても、相手が素手であっても兎に角同じことが云える。
    このように考える時にも、剣・杖・体術の関係は決して矛盾するものではなく、自分が合気道の体捌きの原則に従っている限り、何を持っても或いは持たなくても必ず相手を制することが出来る
  • 体捌きこそ、剣・杖・ 体術を混然一体の働きをなさしめ、合気道を構成しているのである。
    故に剣に頼り過ぎ、杖を意識し過ぎることは禁物である。
    剣と違い杖は操作が複雑なので、ついつい意識し過ぎるものである。
    基本的な練習を充分に行い(素振り 2年以上)、身体の一部の如く意のままに扱える様努力されることが大切である。
  • また、剣による 「鍛錬打ち(タイヤ打ち)」も是非行わなければならない。それ等を修練することは、体術に最も必要な腰の安定性を養う為に大きな役割を果たすことになる。そして遂には腰の安定した体捌きが出来るようになるのである。

基本合気道剣法

礼法

座礼と立礼がある。(神殿に礼とお互いに礼)

握り法(握り方)

  • 「鍛錬打ち」 により握りしめる稽古をする(タイヤ打ち等)。
  • 握りは左手の小指を強くし、 薬指もやや強く、徐々に力を抜き右手を添える(第四教の中で行われる握り方でもある)。

構え

  • 前後左右自由自在であること(小手をかばう構え)
  • (伝) 胴(腰)の働きは両足にあり、頭の動きは両手にあり。
  • 但し、腰のひねることにより足を動かすこと。
  • 足だけを意識してはいけない。
  • 腰のひねりは相手の突きをかわせる程度であれば良い。

素振り法

  • 素振り法は、合気道の理に叶ったものでなければならない。
  • 理と云うのは、第一に気力の充実した素振りであること。
  • 軽い素振り 1000回よりも、気の入った素振り数回の方が良い。
  • 第二に構えが、裏三角法をとっていなければならないことである。
  • その場合、剣の柄頭は常に臍に結ぶことになる。
  • また、そうすることにより、前後左右の動きが容易になるのである。

素振り(1)

  • 真っ直ぐに振り上げ、真っ直ぐに打ち下ろすことが大切である。
  • 特に合気道の素振りでは、剣を打ち下ろした時に腰を十分に落ち着けるのである。

素振り (2)

  • 右足を引いて大上段に振りかぶる。
  • この時充分に腰をひねる。
  • 打ち込みは腰で打ち込むようにする。

素振り (3)

  • 一種の深呼吸である。
  • 右足を引き剣を頭上に立て、宇宙の気を剣先を通じて体内に充満させる。
  • 息を止めて脇構えに移り一気に打ち込むこと。

素振り (4)

  • 左右いずれの足が出ても、腰のひねりが決まっていなければならない。
  • 体裁きの練習法。

素振り (5)

  • 左右に受け流すと同時に打ち込むこと。

素振り (6)

  • 左右いずれの足が出ても即、突きが可能である。 (右足で打ち込み右足で突く)

素振り (7)

  • 右足で打ち込んだ場合受ける力を流して左足を出して突く。

入 身法

多人数攻撃の輪から抜け出る秘法である。
別名「山彦の道」と云い、此方が気を発すれば山彦の如く敵の気が帰って来る。
然し、その時には此方は相手の後方に立って居るのである。
◎ 入身は、一重身が基本である。 入身一足。

  • (口伝)太刀ふるい 前にあるかと襲い来る敵の後ろに我は立ちけり
  • (口伝)敵多勢我をかこみて攻むるとも一人の敵と思いたたかえ

入身投げ

相手の気を呼び出し深く相手の後方に入り相手を自分に密着させ、剣の打ち込みの要領で腰をひねって投げる。

太刀取りの心構え

相手の攻撃を意識すると飛び込むのは難しくなる。
むしろ打たせるような気持ちで相手の気を思い通りに導くのである。

呼吸法

剣の振りかぶりと全く同様である。

座法

剣の握りを左右二手に分け、両腕は半円に描く様に振りかぶり、呼吸力を養うのである。

剣理の体術的展開

  • 人間の性質は一人一人違っていて同じではない。体格についても全く同じである。
    背の高い人・低い人、太った人 やせた人、力のある人・ない人、 身体の柔軟な人・固い人、百人百様である。
    体術はこのようなあたり前のことを認識しそれに対応し、技の中に巻き込む能力でなければならない。
    厳密に云えば、百人百様の術を必要とすると云うことである。
    体術の数が無限に拡大し、 増加する理由もこの辺りにある。
  • 例えば、入身と云う意味は一つである。
    この技は剣の理で云ったとおり相手の背後まで入り込むことであり、多人数攻撃の論から抜け出る方法である。
    ところが、この入身方が投げ技に応用される時には、正しく千変万化するのである。
    技は、無限にある展開するのであり、腰投げについても同様であり、腰の上に乗せて投げるから腰投げであり、しかし、必ずしも腰の上に乗せなくても腰投げの理は生かすことができ、他の投げ技への変化であ。
    だから体術では、相手の気の変化、力の方向を肌身に触れて感じとらねばならない
    否、むしろ自然に感じとるための方便である。
  • 変化の態様には二種類あり、 一つは例えば腰投げから他の投げ技えの変化であり、今一つは、 種々に持たされた状態から基本技への帰納である。
  • 話しを稽古の場に移し、片手取りの場合を考えてみよう。
    此方の手首を握っている相手は呼吸力もあり、握りの極意を体得した者であれば、此方が弱ければ当然身動きできなくなる、相手は単に握手を求めている訳ではないからだ、此方の身体全体を制するために手首を握っているのである。
    握りの極意と申し上げたが、言葉で説明すれば、概略こんなことである、つまり、「親指は相手の手首の脈部に掛かり、小指から徐々に握りしめる、その握力は臍下丹田から発せられ、力を抜いた肩を通って指先に現れる、この握力によって相手の全体を制するのである。」
  • 更に呼吸力の説明にまで及べば、 もっと難しくなる。
    しかし、 握りの極意は剣理に基づいたものであって、正しい素振りを行っている者にとっては、殊更むずかしく考えるこみとではないのである。
    正しい稽古を正しく行えば自然に会得できるように、合気道の仕組は開祖植芝盛平翁によって完成されているのである。
    だから、剣理は正しく素直に学ぶべきである。
  • 一方、手首を握られた場合の此方のなすべきことは、握られたことを意識せず、方の力を抜き、指先に気力を張りつめ、握られた部分を動かさず、動く部分を動かして此方の体制を整え、相手の体制を崩し技に巻き込むことである。
    握られたことを意識せずというこのことだけでも、かなり高度な訓練であり、たとえばの話しであるが、独りで禅を組み無我の境地になろうとするよりも、誰かが来て前から押し倒そうとするのを意識せず、無我の境地になる方が難しいことは明らかであろう。
    だから稽古は、精神的にも肉体的にも素直に行わざるをえないのである。
  • 斯くて(かくて)、合気道は和合の道なりと説明せられる、相手の力とぶつかっていては、相手の握力によって全体を制せられてしまうからである、このように握り一つをえてみても、剣理は広く展開されていることはお判りになると思う。
  • 体術は百人百様に対応した剣理の無限の展開であるとすれば、稽古の方法も自ら多くの人や、やり憎い人をもとめてるようになるであろう。
  • 殊に合気道では得意技を作らず、左右裏表を均等に稽古するのを常としている。
    そして、とこまでも無理のない体捌きにより丸く技を極め、相手に刺激を与える。
    身心に蓄積されたカスを取り払う、理想的な健康法である。

呼吸法の変化

呼吸法とは、呼吸力を養う方法である。
呼吸力の無い合気道は、力の入らない相撲のようなものである。
腕力などの様な筋肉的な力と対照的な呼吸力は、剣の振りかぶり振り下ろしに基づいて
いるが、然し、 単に剣を上げ下げするだけでなく、 体術的に相手に手首を握らせた上で行うので非常に合理的な鍛錬方法である。

体術の良さは、 相手の体格的な個人差を考慮しなければならないことと、相手の握った手が離れてしまわない様な手刀の用い方(結び)も会得できることである。
剣をふりかぶる時には、極、自然に息を吸い込み、振り下ろすときには息を吐き出す、この無意識に行われる呼吸が、技を行う場合に必要な力となって、 大いに発揮されるのである。

この呼吸法には、立って行う場合と座って行う場合の二通りがあるので、それぞれ簡単に説明してみよう。

座技・呼吸法

基本の呼吸法

  • 向かい合って座り、両手の側面から軽く握らせて(持たせる)行うのが基本である。
  • 先ず肩の力を抜き、 お臍の力が指先に来るように指先を充分に開く。
  • 両手の間隔は自分の肩巾よりやや広めにし、そして剣の振りかぶるきもちでを両手におきかえて、手刀部分が相手の脇の下に当たるように振りかぶる。
  • 左に倒す場合は右ひざが、右に倒す場合は左ひざが崩れる相手にどこまでもついて行き、脇下に入る。
  • 両手の手刀はそのままくずさず、相手の身体に押しつけずに構える。
  • 相手の起き上がろうとする気を制するのである。

立技・呼吸法

基本の呼吸法

  • 相手の側面に回りこむ。
  • 握られた手首を中心にして、 肩も肘も腰も気持ち下げる(口伝)と振りかぶりが出来る体勢になる。
  • 投げる時には相手の背後に一歩踏み込む。
  • 肩に力をいれたり、持たれた手を意識することは最もよくないけいこである。