昭和34年5月

開祖は語る

勝つとは、己の中の「争う心」にうちかつことである。

合気道の極意は、己の邪気をはらい、己を宇宙の動きと調和させ、己を宇宙そのものと一致させることにある。
合気道の極意を会得した者は、内夕がその腹中ににあり「我は即ち宇宙」なのである。
そこに速いとか、遅いとかいう、時間の長さが全然存在しないのである。
この時間を超越した速さを、正勝(まさかつ)、吾勝(あがつ)、勝速日(かつはやび)という。
正勝・吾勝・勝速日とは、宇宙の永遠の生命と同化するこどである。
では如何にしたら、己の邪気をはらい、心を清くして、宇宙森羅万象の活動と調和すること出来るであろうか。
それには、まず宇宙の心を、己の心とすることだ。
宇宙の心とはなにか? これは上下四方、古往今来、宇宙のすみずみまでにおよぶ偉大なる「愛」に敵はない。
何者かを敵とし、何ものかと争う心はすでに宇宙の心のではないのである。
宇宙の心と一致しない人間は、宇宙の動きと調和できない。
宇宙の動きと調和できない人間の武は、破壊の武であつて真の武ではない。
だから武技武技を争つて勝ったり、負けたりするのは真の武ではない。
真の武は、 正勝 吾勝 勝速日であるから如何なる場合にも絶対不敗である。
すなわち絶対不敗とは、絶対に何ものとも争わぬことである。
勝つとは、己の心の中の「争う心」にうちかつことである。己に与えられた使命をなしとげることである。